「うわぁ、ふかふか」

 早足で向かった“そこ”に設置されていたもの。

 それは座り心地の良いソファーだった。

「な、割に意外と埃がたまってるなぁ……」

 手で触った感触はとても私好みで良い感じだと言うのに、ソファーに触れた自分の手を見つめるとその手は黒く汚れていて。

 私はスカートのポケットに忍ばせておいたハンドタオルを取り出すと、それでソファーを綺麗に拭き始めた。


「……駄目だ。これはタオルが必要だ」

 いくらなんでも人一人が横になれるくらい大きいソファーの汚れを落とすのに、ポケットに仕舞えるくらいのハンドタオルでは太刀打ちなんて出来るわけなくて。

 半ば諦めかけていた、そんな時だった。


「じゃー、これ使う?」

 差し出されたのは真っ白なタオル。

「お、ありがとー。これで綺麗に出来るー」

「いやいやー、感謝には及ばないっすよ。アンタの名前さえ教えて貰えれば」


 ……あれ?

 なんで本当は入っちゃ駄目な屋上に。

 欲しいと思ったタオルが急に現れるのだ?

 ……そして。

 何故、私は独り言ではない会話を、しているのだろう。