Turrrrrr Turrrrrr


 稔の携帯電話が鳴り響く。


「もしもし。」


「あ、稔?俺だけど。」


 圭だった。桜を心配して、稔に毎日電話をかけていた。



「あぁ、圭か。」


「桜の様子はどうだ。目、覚ましたか?」



「あぁ、今な。代わろうか?」



 目を覚ましたことを知り、電話の向こうで安堵の溜息が聞こえる。



「いや、それならいいよ。…良かった。
 …あ、それから、おまえ、桜を抱えてA棟に飛び移ったんだって?」


「あ…うん。そうだけど。」


「…。お前には負けるよ。…安心した。じゃ。」



 ガチャ。


 圭は一方的に切ってしまった。稔はあることに気づいた。


 …そうか、あいつ、桜のこと…。


「…。」


 その事実に大きく息を吐き出し、桜のところへ戻った。




 桜は稔と少し話をしたが、疲れているようでぐっすりと眠ってしまった。