稔は無事にA棟に飛び移った後、非常階段で降りてA棟の玄関から出た。


そして桜を安全な所に連れて行った後、何かあるとは思わないが、念のため、火事が起こった現場へ赴いた。


 そこには、まだ打ち上げられていなかっただろうと思われる花火が、いくつか残っていた。


 が、打ち上げられるはずの場所となっていたのは、コンクリートの広場ではなく、わざわざ危険を買うような、B棟1階の倉庫の出入り口だった。


 出入り口といっても、中庭の芝生から10cmくらい段差があるだけの狭いものだ。


 しかし、どうしてこんな所で花火を用意したのだろうか。


 ん?

 
 足跡…



 稔が辺りを観察すると、芝生の周りには、誰かが踏み荒らしたような沢山の足跡が残っていた。



 そしてこの花火の担当が誰であったのかはわからないが、その担当であった先生に対しての疑惑の念が稔の心の中に残った。






 その後一週間、桜は気を失っていた。