桜は母親にもらったロケットペンダントをいつも身につけているのだ。

 
 もっとも、本当に母親らもらったかどうかも自信を持って言えるわけじゃないのだが、かすかにそんな記憶があるらしい。



 その写真には、中央に女性、両脇に男性が写っているのだが、たとえ中央の女性が母親であったとしても、左右のどちらの男性が父親かわからないのである。


それにこの写真は古いうえにもともとピントが合っていない。映っている3人とも、顔がはっきりしないのだ。

桜の歯切れの悪さはここからくるものだった。両親の写真も何もない桜にとっては、どちらかがお父さんであってほしいということさえも、希望的観測であった。