「あぁ……あれ、肉まんみたいやなぁ」




夏休みも終盤。




今日も空はやたらに青くて、雲はやたらに白かった。





棒アイスをくわえながら堤防に寝そべり、雲を見上げるヨシが呟いた。





「発想貧困。食い意地張りすぎ」





隣に座って棒アイスの片割れをしがみながら、鼻で笑ってやった。




「もっとマシな例え無いん? 白くて丸いもんって言ったら……」



「……ボールやな」



小さく漏らしたヨシの言葉に、はっとした。





テレビでは今頃、




日本中で一番強いチームが、ピッチャーマウンドで抱き合ってる頃かもしれない……。




「さてと……。部室の片付けでも行ってくるわ」




いつの間にか立ち上がったヨシは、日焼けした腕を空に向けて伸びをしていた。





学校に向かう一本道で、小さくなっていく制服の背中に、





背番号“1”が不意にダブる。




地方大会準優勝。




歴史には残らなくたって、




普段はただのアホのアンタが、





背番号の“1”と、チームメイトの信頼を背負ってるときは、




めっちゃ格好いいってこと、わたしは一生、覚えてるよ……。