「ねぇ美紀、なんか楽しそうだし試してみようよ!」


真子が嬉々とした表情で言った。


「うーん…でも」


「せっかく無料なんだし、今ふたりとも彼氏いないんだからさ。次の相手を探す前にどんな恋愛が向いてるのか、知っておくのもいいんじゃない?」



真子の言っていることは確かに筋が通っていた。


いや、真子に共感したフリをして、ただ自分を納得させる材料が欲しかっただけなのかもしれない。



わたしは早く楽になりたかった。

いつまでもあの日の言葉に縛られたくなかったから。


もうあんな別れ方はしたくない。あんなに辛い気持ちを味わいたくない。


わたしはずっときっかけを探していたんだと思う。



それに気づいてしまったから、答えはひとつだった。



「うん、試してみようか」



「わーい、やったぁ」




「では、こちらの書類にサインをしてください」



御堂さんはいつの間にか黒いファイルを抱えていて、そこから契約書を取り出した。