「そもそも、なんのために恋愛サンプルがあるんですか?」


わたしの問いに、御堂さんはにこやかに答えた。


「自分に一番合う恋愛を知るためです」



御堂さんの目がまっすぐにわたしを捕らえる。




「香水や化粧品を選ぶときのようにサンプルを使えたなら、恋愛で傷つくことはなくなると思いませんか?」



わたしの心臓がドクンとはねあがった。



「恋愛にこそサンプルは必要なのですよ」



御堂さんの言葉のひとつひとつが、わたしの心に入り込む。




―嫌いになったわけじゃない。でもこのままじゃダメなんだ―





今でも耳に残るあいつの声が、わたしの心を締め付ける。




「恋愛サンプル、試してみませんか?」