おばさんの出してくれた暖かいミルクをすすりながら暖炉の前へ座る。
砂漠の夜が冷えるのは本当らしい。
毛布を頭からかぶりなおして、隣を見れば、マグカップからスプーンでミルクをすするうーちゃん。
「ここのおばさん、宿屋の人でよかったね」
「そうじゃなきゃ今頃ボクとアリスは凍え死んでたよ」
「そうかもね」
またミルクをひとすすり。
「体は温まった?」
後ろを振り返ると、同じくマグカップを片手に持った先ほどのおばさんの姿。
「おばさん、あの砂時計なんなの?」
うーちゃんは口の周りをミルクで真っ白く濡らしたまま、おばさんに問いかけた。
おばさんは、片手でひょいっと、うーちゃんをつまむと、キレイな布でうーちゃんの口の周りをぐしぐし拭いながら説明してくれた。
おばさんの話を要約するとこうなる。
昔からのこの村の中央には、あの巨大な砂時計が存在している。
あの砂が上にある間は夜、下へ移動すると昼になるそうだ。
つまり、砂が上から下に移動しているときは0時から12時。
砂が下から上に移動しているときは12時から0時とうことになるらしい。
(砂が下から上に移動するなんて、不思議)
しかし、最近、急に砂が上へいったっきり、落ちてこなくなってしまったのだ。
それからこの村はずっと夜のまま、朝がこなくなってしまったのだという。