「ついたよ、アリス」

……ついたって、確かについたけど。

「人っ子一人、いないじゃん。ここでどうすればいいの」
「アリスが思うとおりにすればいいの。ここはアリスの夢だから」
すっかり私の名前がアリスで定着していることは、この際気にしないことにする。
私は、とにかくうーちゃんの言うとおりに辺りを散策することにした。

とにかく前へと歩くと、民家の並ぶとおりが途切れ、広場のような開けた場所へ出た。
その中央には……

「砂時計?」

小さな村の広場には不釣合いなほど巨大な砂時計。
まるで公園の噴水のように置いてある。

さらによく近づいてみるとわかるのだけど、砂は全て上側にたまっているのに、
全く不思議なことに砂は一粒も下に落ちている気配が無いのだ。

「不思議でしょう。この間から急に砂が落ちなくなってしまったの」

ふと声をかけられ、後ろを振り返ると、村の人だろう、年のころは中年の一人のおばさんが立っていた。

「あなたたち、旅人さん? 砂時計を見に来たのでしょう、残念ね。砂時計は止まってしまって、おまけにずっと夜。
今晩の宿のご予定は?」

私が返事に困っていると、うーちゃんがずい、と私の前にすすみでた。

「旅人なんです。けどお宿の予定はないのです」