二人の出会いから数週間がたった。
「あっ、圭君おはよう」
「おはよう、神崎」
圭と理沙は出会って初めて話したあの日から、少しずつ仲良くなっていた。
「圭って最近ちょっと笑うようになったよな」
「まぁ、理沙ちゃんのおかげだろうな」
女子の中で唯一、理沙と話すときだけ楽しそうに話す圭は、いつしか友達にからかわれるようになった。
「ちがうし!それに神崎は彼氏いるだろう」
圭は呆れた様子でからかう友達に言った。
「そういえば、確かに3年の木下智ってやつと仲良いもんな」
理沙と悟は仲が良かったため、周りから付き合っていると噂されていた。
だからどこかでそれを聞いた圭も、付き合っていると勘違いしていた。
「残念だよなー!やっと圭は本気で恋するかと思ったのに」
「どうせならさ、あの時無理にでも理沙ちゃんに、告白させればよかったな」
勝手に話を進めていくのを見ていた圭は、さすがに我慢の限界らしい。
「勝手に言ってやがれ!」
そう怒鳴ると、その場を立ち去っていった。
圭はそこらへんを適当に歩いていると、背後から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「圭ー!やっと見つけたぜ」
圭を呼び止めたのは、同じ2年の藤堂 正也(とうどう まさや)だった。
さっきの友達とは比べものにならないくらい、圭にとって大事な親友だ。
圭は正也に気が付くと、さっき来た道を戻って正也のところへ行った。
「急にどうしたんだよ?」
圭は不思議そうに正也に尋ねた。