第一印象は“綺麗”っていうより“無口でかわいい”娘だった。

ショートヘアのすっきりとした顔立ちに、他の娘と比べて薄めのメイク。ほんのり桜色の口紅は色白の肌に良く似合っていて……。


確かに『聞け、お前ら!今回の合コンは美人ぞろいだぜ!』と自信あり気に言うだけのことはあったようだ。

美大生との3on3

うち二人は、いかにも合コン馴れしてますよ的な口調で話しかけて来るので、話題に困る事はなかった。

こっちも俺以外の二人は口から先に生まれてきたような奴らなので、洒落た居酒屋の一角で行われている恋愛活動は、そこそこの盛り上がりを見せた。


「で、俺達二次会でカラオケ行くけど、どーするキミら?」

「俺はパス。明日提出のレポートあった」

「あ……あたしも帰ります……」

実はレポートなんて嘘っぱちで無いのだが、やっぱり合コンのような軽いノリは得意じゃない。

どうせ今回の参加も人数合わせのために仕方なく、だ。


ハイテンションで笑うダチの背中を見送った後、ふと隣を見れば、あの三人の中で終始殆ど口を開かず、俯きがちに酒をちびちび飲んでいた娘がこっちを見上げていた。

頬を唇と同じ桜色に染めながら、トロンとした目で俺の目を見つめて。

大方酒のせいだろう。けど、何も話さないのも不自然なので適当に話題を振ってみる。

「えっと……二次会は行かないんだ?」

コクン。

「カラオケ苦手?」

コクン。

首を縦に一回、二回と振って応える……やばい、滅茶苦茶かわいいんだけど……。

「そ、そろそろ帰ろうか?送るよ」

そう言ってさり気なく右手を差し出してみる。

ぷるぷる。

首をゆっくり横に振る仕草と、おずおずと右手を握り返す柔らかな手の感触。

「……お願い。隣、もうちょっとだけ……」

そう言いながら目を閉じ肩に寄りかかってくる。初めて君が俺に見せた笑みは、まるで秋桜(コスモス)のようで―――。