「…おい!……おいって!」


遠くから声が聞こえ 鳴り響く泣き声を遮った。


「昂夜(こうや)!」


亮介が一際大きな声を上げ 俺の名を呼ぶと 体の呪縛が

ふっと 解けた。


……と 同時に 俺は全身の力を失い
その場にへたりこむ。

「おい!大丈夫か!?…」

慌てて亮介が 俺の背中をさする。


「お前…どうしたんだよ…」


そんな俺達を見下ろすだけで
周りの連中は知らん顔をしていた。


朝の駅のホームでは 当たり前なのかも知れない。


誰もが自分の事で精一杯だ。


俺は ソレを有り難いとすら思った。

オロオロしながら俺の背中をさする亮介を 右手で制止しながら


「だ…いじょ~ぶ…」

やっとの思いで言った。


…声が出るよになった。


奪われていた体の自由も 脱力感を除けば何とか取り戻したようだ。


ただ…


まだ 泣き声は止まない。