バスがふたりの前を通る。
「サッカー、頑張ってね」
ようやく言葉を発した桜子。
敬語じゃなくなっていた。
「え、あぁ。ありがとう。俺はサッカーしか頭にないから」
そんなことないだろう。
涼太。
君は今、桜子を前にしてドキドキしている。
きっと今夜、君は桜子を思い出して眠れない。
「応援してるから」
桜子は搾り出すようにそう言った。
好きだなんてまだ言える雰囲気ではないけれど、
もう少し進展してくれてもいいんじゃないか。
「日向丘君のサッカーしてる姿、見るの好きだから」
桜子の勇気に僕は胸が熱くなった。
涼太を好きだとは言えないけど
涼太のサッカー姿が好きだとは言えた。
「もし……良かったら、また見に来いよ」
「え……」