ジン爺さん。


 軍の諜報部であり、スラムで得た情報、脱走兵の情報を逐一軍に流し込んでいる情報屋。


 まともに仕事をやっているところは誰も見たことがないのは、それだけ彼が優秀な軍人であるということ・・・。


「難儀やな・・・・。」


 結局、海人は銃をポケットにしまう。


 どちらにしても、エリアスに銃を撃つことなんてできはしなかったのだ。


 海人の完敗だ・・・。


「何をいまさら・・・・」


 エリアスの紫煙交じりのため息。


「・・・・せやな。」


 思わず、海人から微笑がもれる。


「すまなかったな・・・。」


 それだけ告げると、海人は足を動かし始める。


 結局、無駄足に終わってしまった。


 分かっていたが・・・やっぱり、悔しい。


 しかし


「海人!」


 出口に来たところで、エリアスに声をかけられる。


「なんや?」


 顔だけ身体は出口をむいたまま、顔だけエリアスの方を向く海人。


「私は今の世界に、何の希望も持っていない。・・・・・・・それでも、何か変えられると者がいるとすれば、お前のような人間だと、信じているよ。」


「買いかぶりすぎや。」


「私の男を見る目を疑うのか?」


 それもそうだ。


 海人は軽く笑みを浮かべてそれに答えると、右手を振って病室を後にした。