「なら、今いれるわ。」


 彼女のベッドの横に行くと、備え付けのコップに注ぐ。


「ありがとう。」


 幸い彼女は右利きだったらしく、左肩を固定したまま右手だけで起用にお茶を口に運ぶ。


 一口飲んで・・・。


「ところで、鈴蘭・・・って、そんな喋り方だったっけ?」


「え?」


 唐突の質問に、海人の笑顔が引きつる。


「え、あ、ごめん。そんなつもりじゃないんだけど・・・私、記憶喪失になったみたいでさ、アナタのことよく覚えていないんだ・・・。顔とか声とか、喋り方とか・・・。」


「さいか。」


「あ・・・うん。ごめん・・・・。」


 顔をうつぶせてあやまるキラ。


 そのしぐさは、本当に可愛らしい。


「別に、あやまることやない・・・俺もあんたと一緒で記憶がないんやから・・・。」


 隠す必要はない。


 こういうことは最初に言っておくべきだ。