病院の待合室から、道に迷いながら歩くこと10分。


 看護婦に聞いてようやく海人は、助けた女性が寝ている病室に辿りつく。


 病室の扉に書かれているネームの欄には『KIRA』と書かれている。


 彼女の名前なのだろう。


(男みたいな名前やな・・・。)


 正直、美人の彼女には似合わない名前だと思ったが、口にすることではない。


 扉越しにノックを二回した後、返事を聞いて扉を押す。


「あ、やっぱり鈴蘭来てくれたんだ。」


 病室に入った途端、ベッドから半身だけを起こして、笑顔を向けるキラ。


 助けたときには見えなかった瞳はやっぱり、海人の予想通り大きく、肩まで伸びている黒髪に良く似合っている。


 先ほど来ていた軍服は血まみれで脱いだらしく、今は真っ白の病院のガウンを着ている。


 肩に巻かれた包帯が、彼女の怪我がどの程度が示している。


 正直・・・・美しい女性だと思った。


 これでは、エリアスに言ったウソが本当になってしまうやないか?


 海人は、心の中で毒づきながら、キラに笑顔を向ける。


「ああ・・・。まあな。身体の方は大丈夫なんか?」


「うん。肩以外は目立った外傷はないって。三日もすれば、退院できるらしいよ。」


「そうか・・・それはよかった。そういえば、お茶買ってきたねん。飲むか?」


 先ほど、自動販売機で買ってきたミルクティーを見せる。


「うん。ありがとう!」


 それに対して、笑顔を向けるキラ。


 瞬間、自分の顔が上気したのが分かった。


 いい大人が、情けない・・・。