「まぁ、いいか・・・。」


 思わず、声に出る。


 思い出せなくても、別にかまわない。


 おぼろげな意識の中で、私にかけてくれた声。


 あの声は、間違いなく鈴蘭の者だった。


 この街では海人と名乗っているみたいだが、きっとそれなりの事情があるのだろう。


 きっと、もうすぐお見舞いに来てくれる。


 二年ぶりの再会だ。


 一体、どんな顔をすればいいのだろうか。


 私は、自然と緩む顔を必死に押さえつけ、ゆっくりと窓の外を眺めた。


 灰色の空に、ゴミだらけの町並みがそこからは見えた・・・・・。