真っ白い天井に清楚な部屋。
ピンク色のカーテンで簡素に仕切られたベッドは全部で四つ。
自分は、その中で窓側の東方向に位置するベッドで横になっていた。
たまたまなのだろうが、私以外のベッドは全て空いている。
ここは、スラム街にある小さな病院の病室。
記憶はまったくないが、看護婦さんの言うことには肩に銃弾を食らって病院に担ぎ込まれたらしい。
どうやらギア・ドールの中で発見されたらしいのだが、一体私は、いつギア・ドールの操縦方法を覚えたのだろうか?
そういえば、白い天井ってどこかで見たような気がする・・・・・・・。
先ほど、エリアスと名乗る女医がCTスキャンの結果を片手に説明してくれた。
どうやら、脳に何かしらの強すぎるストレスやショックを受けた結果、脳の中で記憶を司る海馬が急激に圧縮され、記憶の一部がごっそり抜け取れてしまったらしい。
彼女が言うには、この世界では珍しい症状ではないようだ。
それでも、私の記憶は全て消え去っていないことは、頭を少しでも働かせれば分かる。
私の名前はキラ。年齢20歳。職業・・・は、分からないけど、2年前に恋人である鈴蘭と空襲で別れたまま、いまだに再会できる日を望んで一生懸命生きている健気な乙女。
・・・・・・そういえば、鈴蘭ってどんな顔をしていたのだろうか?
一生懸命頭を働かせてみるが、まったく出てこない。