エリアスらしい洒落た言葉。
放射能の影響を受けない深海500メートル地点に作られた海底ドーム。
太陽の光なんて、200以上も昔の産物。
もはや、欲するだけ無駄だと思えるぐらいの時がたちすぎだ。
「せやな・・・。」
否定なんてできるはずもない。
もし、楽園というものが存在するならば、今すぐ全てをなぶり捨てでも、自分はそこに飛んでいくだろう・・・。
「それじゃあ、彼女には優しくしておけよ。女は、お前たちと違ってデリカシーの塊なんだから。」
それを捨て台詞に、立ち去るエリアス。
先ほどの言葉から、次の患者を見に行ったのだろう。
自分もいつまでもこの場にいるわけには行かない。
フィルターだけになったタバコを備え付けの灰皿に捨てると、海人は助けた女性が寝ているという病室に向かって歩き出した。
途中、エリアスの言葉が頭をよぎる。
人は、とうとう星の最下層・・・悪魔の巣食う地獄に住むようになってしまった。
「そりゃ、神も呆れるわな・・・。」
本心から出た言葉。
きっと、今まで世界を救ってきた救世主も、こんな世界までは救いたいとは思わないだろう。
だが、そんなコトを考えても世界が変わるわけでも、この世界から逃れられるわけでもない。
海人は、さっさと思考を切り替えると、女性に対しての話題を考えながら病室へ足を進めた。