「人間が海底ドームに移住してから、200年余り・・・。新天地に適応するため遺伝子操作による人体改造もすでに限界。」


 ため息を漏らしながら紫煙を吐き出すエリアス。


「寿命の減少と出産率の低下。成人になってから脳に何かしらの異常が起こる人間も、今の時代は20人に1人。記憶障害ぐらいで、四の五の抜かすな・・・か?」


 確かに、いくら記憶障害になったところで死ぬわけではない。


 ましてや五体も十分に動き、私生活に何の支障もないのなら、自分が何者か分からないぐらいで、騒がないでくれ・・・・。


 こんな時代だからこそ言える言葉だ。


「そう言うわけではないがな・・・・・・・。一週間もすれば退院できる。意識も戻った。話もできるがどうする?」


 エリアスの質問。


「なら、少しだけ顔を見てみるわ・・・。」


「・・・そうか。」


 エリアスは、タバコを大きく吸うと。


「まったく・・・どうして、こんなにも追い詰められた世界の中で、私たちは戦争なんて起こすのだろうな?」


 紫煙と共に吐き出した。


「どないした?突然?」