「なら・・・。」
お前は?・・・と、言おうとして。
「もちろん、私の家ももう一人住めるスペースなどないぞ。美男子なら別だがな・・・。」
先を越された。
もしエリアスの予想通り、彼女が本当に記憶障害だというなら、帰る家なんて当然あるワケがない。
「なら、仕方ないか・・・。」
一応、アルクにも聞いてみないと分からないが、自分たちの家には、まだ4つの空き部屋がある。
住人が一人増えるぐらい問題ではあるまい。
アルクも自分も、女性ならば誰でも手を出すほど無節操ではない・・・。
問題は、金だ。
さて、どうしたものか?
「それにしても記憶障害とはな・・・。」
そんなコトを考えているとエリアスがゆっくりと紫煙を吐き出しながら、口にした。
『厄介な相手だ』と、口にせずともその表情が語っている。
「・・・・・・・・・・別に、珍しい症状ではないやろう?」
自分の口から出た紫煙を目でおうように、天井を眺める海人。