白い壁に、清潔なたたずまい。


 ナースや医者こそ歩いていないが、ここは立派な病院である。


 スラムにある、政府非公認の小さな病院。


 スラムで起こる怪我や病気を一手に引き受ける、この病院では総勢5名の専門医がおり、30人のナースがいる。


 正直、徴兵から逃れることができる医者たちが、どうしてこんなにも多くスラムに集まって病院が開けるのか、いささか疑問はあるが、そこまで追及する気はない。


「よぉ、海人、久しぶりだな?」


 病院の待合室でタバコをふかしながら、ただずんでいると、一人の黒スーツ姿の女性が海人に話しかけてきた。


 彼女の名前は、エリアス。白衣こそ着ていないが、これでもきちんと医師免許を持っている、外科医である。


 黒衣の医者なんて・・・縁起悪さもいいところだ。


「ああ・・・久しぶりやな・・・。それで結果はどうだったんや?」