「売れば、数千万やな・・・」


 正直な感想。


「持っていくの?」


 冗談。


「本当に、無傷のギア・ドールならな・・・。」


 海人は皐月を白いギアの近くまで持っていくと、エンジンを止めてコックピットハッチを開く。


 そこから降りて、向かう先は白い機体のコックピット。


「海人、大丈夫?」


 菫の心配そうな声。


「さあな?」


 そうとしか、答えようがない。


 もしかしたら、ハッチを空けた途端に爆発するという可能性も考えていないわけではない。


 無視するのも一つの選択肢としてはいいだろう。


 だが、やっぱり気になるコトをそのままにするのは、性に合わなかった・・・。


 海人は、何とか胸元までよじ登ると、コックピットハッチの右隣についてある、小さなボタンを押す。


 強制排出ボタン。


 コックピットハッチが真上に上がると同時に海人の鼓膜に響くのは耳障りなほどのブザー音。


 モニターには『強制停止、予想可能活動時間46:28.残弾2730』など、必要以上の情報が羅列されている。


 こんなにも情報がモニターを占領していたら、戦闘時の邪魔になるだろうに・・・。


 そんなコトを考えながら、海人がコックピットシートに顔を向けると、頭をぐったりと下げて、生気を失った士官を見ることができた。