美花さんとの出会いは、僕が入社して研修後に企画課へ配属された事がきっかけです。
それはもう、とても怖いものでした。
5年前の美花さんはとても美しく、いえ、今も美しいのですが…輝いておりました。
研修後に人事を言い渡される会議室でのイベントがあるのですが、各課の先輩達も集まりかなりにぎやかになるのです。
そこで、僕の名前と配属が発表されると会議室は騒然となりました。
企画課にはすでに、坂下深雪が配属を言い渡されていましたから、僕の名前はそこに出てこないはずだったんです。
しかも、桜の園と言われるぐらいに綺麗どころの女性しかいません。
坂下深雪も同期の新入社員女性の中では、1,2を争うほどに美しいので企画課は当然の人事でした。
そこによりにもよって、僕ですから予想外の人事ですよね。
後で聞いた話によると、その年に企画課の女性が退職し、男性課長が栄転になりその穴埋めとして2人が選出されたのです。
退職した女性の代わりが坂下さんだとしたら、僕は男性課長の代わりになります・・・まさか、と思いますよね、でも、そのまさかだったんです。
課長の穴を何故新入社員の僕が?と、最初は思いました。
実は男性課長の北条拓人さんは、企画課の課長としての管理能力はもちろんですが、美花さんの企画を忠実に形に出来るものすごいスーパー課長だったそうです。
デザイナーといっても良いぐらいイラストレーターからコンピューターグラフィック、そして簡単なCM作成まで出来る芸術面でも凄腕の人だったそうです。
美花さんの時して無謀な企画さえ、ものすごい企画に変えたという伝説の課長です。
美花さんが企画したものを北条さんが形にしてプレゼンすると、その商品は必ずヒットすると言われ、とにかく企画課には毎日他の部署や関係会社まで商品の持ち込みと企画案のお願いが殺到していたんだとか。