まさか、とは思ったが…そのまさかだった。


「翔には迷惑かけないから…産んでもいいか?」


「…返事は直ぐには出来ない」


「じゃあ、何か?堕ろせって言うのかよ?」


取り乱す薫子。


周りにも聞こえているかもしれない…。


「違う、そうじゃない。ただ、トップモデルとして気付きあげて来た地位が無くなるかもしれないんだぞ?」


「何だ…その事か。もう、充分、夢は見させて貰ったし…それに、産んでからでも仕事が来るように努力する。

最近は女優の仕事も楽しいしな、その道に進むのも悪くない。もう、年齢も年齢だしな…」


薫子には薫子の将来のプランがあって、この先も芸能界で生きていきたいと願っている。


諦めた俺とは違い、いつだって前向きで、俺の心の弱さを気付かせてくれる存在。