「そうだったのか…翔も辛かったな」


フワリ…と髪の毛の柔らかい、いい匂いがしたと思ったら、薫子は俺の肩に両腕を回した。


「…何でお前が泣くんだよ?」


「泣いてない…ただ、翔が余りにも不敏なだけだ」


首筋に不意に落ちてきた雫はきっと、薫子の涙。


何を思って泣いたのか…聞きはしないけれど、俺を愛しく思ってくれてるのは確かだろう。


マネージャーで有りながら、薫子と付き合い始めてしまった俺。


誰かに見つかるなんて、ヘマは絶対にしなかったんだ。


しかし、更に数年後…


俺は薫子に対して、モデルとしての時間をストップさせてしまう事になる。