次期社長という肩書きはあろうとも、あいつらを見守りたいんだ。


薫子は有名なトップモデルになり、もう俺じゃなくても大丈夫。


社長になる日が近づくまで、あいつらの側で、俺の叶わなかった夢を見させて。


「今なら教えてくれるか?解散した理由…」


ソファーに寄り掛かって座る俺の横に薫子は座り込んで、遠慮がちに聞いてくる。


時が経った今なら話せる。


俺が事務所を継がなきゃならずに悩んで、焦っていた事。


本当はもっと続けたかった事。


一番の理由は、下り坂の終止符が見える事が怖くて、絶頂期に逃げた事。


メンバーには『事務所を継ぐから』と告げ、強引に抜けて…その結果、解散となった。


自分が落ちぶれて行くのが怖くて、逃げ出した。


俺は最低の臆病者なんだよ。


―――だから、お前に質問したんだ。


“絶頂”の先に何があるのか…。