夜の公園は、葉桜になりつつあるのにも関わらず、賑わっていた。


「また来年まで桜は見れないね」


ハラハラと舞い落ちてくる花びらを見上げて、薫子は切なげな表情を浮かべた。


電灯と花見の時期にだけある提灯の明かりに照らされて、その姿は妖艶にも見える。


幾つもの可能性を持つであろう薫子が、実に興味深い。


「そしたら、また来年、見に来ればいい」


「そう…だな」


来年も再来年も、同じ場所に咲き続ける桜を見に来よう。


例え、儚く散る運命だとしても、薫子の一言で好きになれそうだ。


誇りを持ち、咲き続ける姿をこれからも毎年、命尽きるまで見てやる。