レイプ、いじめ、中絶、援交。
手のひらの中で広がる刺激的な世界。

僕はため息をつきながらケータイを閉じた。
ぱちん、という、乾いた音がワンルームに響く。

「小説みたいな展開なんてないし」

ハッピーエンドなんて信じてないし。
退屈な日常は続いてくだけだ。
僕がいても、いなくても。

時計の針は、午前2時すぎを指していた。

「のどかわいたな・・・。」

緩慢な動きでベッドから降り、冷蔵庫へ向かう。
一歩踏み出す度に、古びたフローリングがギィギィ鳴った。

古い木造アパートの一室には、今はもう僕しか住んでいない。
寂しいってのはやっぱりあるけれど、生活態度を誰にも咎められないのは気が楽だ。

「こんな時間に炭酸飲料飲んでも・・・ね。」

冷蔵庫の照明が暗がりを静かに照らす。
別に意図して部屋を暗くしているわけじゃない。
切れた蛍光灯を代えるのが面倒なので放置しているだけだ。
何を取り出すのかも、迷うことはない。
冷蔵庫にはコーラしか入っていないからだ。