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2LDKの、比較的広くて綺麗な部屋。

いや、綺麗にされているという表現の方が合うかな。隅々まで掃除が行き届いていて、清潔感が漂っている。

なんていうのは、正直問題じゃなくて。

部屋に通された僕は、ちょっと気まずい状況にあります。


「ふふ、瑞樹がお友達を連れて来るなんて初めてやんな」
「ともだちっ、ともだちー!」

どうやら、椎名君の妹はお母さんの所に報告に行っていたらしい。椎名君に助けを求めようと目線を送ると、軽やかに無視された。さっきの仕返しだろうか?

「あ、えと、野々上恵です」
「まあ!素敵な名前やねぇ」
「めぐ兄ーっ!」

ちょっと、ホントどうしよう?

本当に、本当に。こういう事には慣れていなくて戸惑ってしまう。

今までも友達、と思われる人達の家に行く機会はあったけれど。こんな風に温かく迎えられた事はなかった。

勿論、表面上は温かく優しく見えた。でも、裏の感情が見え隠れする。

どこか見定められているような、そんな嫌な気分になっていたから。だから、


「私は、瑞樹の母親の皐月言います。おばちゃんとか言われると悲しいから皐月さん言うてな?ほら、静樹も紹介しぃ?」
「し、ず、き、です」

顔を真っ赤にさせて、一生懸命答える静樹ちゃん。温かい、本当に温かいな。