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椎名君の家は、

よくあるタイプのアパートの一室だった。

五階建てだけどエレベーターは無く、階段のみの造り。少し不便なんじゃないかな?と思ったけれど、椎名君は二階に住んでいるらしいので「困らない」と言っていた。


そして、

僕は全身に鳥肌が立つという体験を、この日初めて味わう。


「―――」

茫然と立ち尽くす僕を見て、椎名君は深い溜息を一つ吐いた。

「いつもの事やから。てか、失敗やな。なんで俺、家に連れて来てしもたんやろ…」

慣れた手付きで、扉に貼られた幾つもの紙を剥がしながら椎名君は再び溜息を吐く。


『人殺し』

『出て行け』

『社会のゴミ』

『死ね』

『消えろ』

『害虫一家』

『人殺しが住んでいます』


あまりにも酷い誹謗中傷の文字。ねえ、なんで、なんで、なんで…

「……まあ、しゃーないわなあ。兄貴がした事は許されることやないから。そんなん、俺らが一番よお解っとるしな」

なんで、どうして椎名君が、