黒目の時は、柚樹
赤目の時は、瑞樹

どれ程辛かっただろう。







「……変なもん見せてもて、変なこと聞かせてもて悪かったな」
「ううん、聞けて良かったよ」

「―――」

長い、長い間。

僕は椎名君の話を黙って聞いていた。そして思った事がある。感じた事がある。

ああ、僕はこの人と友達になる為に此処に居るんだって。


「話してくれて有難う」
「…あ?」

ベンチから立ち上がって、椎名君と向き合った。椎名君は、どこかまだ戸惑ったような顔をしているけど。でも、

そんな事にはお構い無しに、僕はにこっと微笑んだ。そして、


「だって、友達の事は何でも知っていたいって思うもんじゃない?僕は何を見ても何を聞いても変わらないよ。だから改めて宜しく、――瑞樹」

調子に乗って、手も差し出してみる。あらら、これは流石に失敗かな。右手がポツンと独り虚しい状態になってしまった。

「ホンマ、変わっとんな」
「はは、そうみたい」
「……ハア」

椎名君もゆっくりと立ち上がり、僕の横に並んで小さく伸びをする。――距離、ゼロ。