公園に着いた僕達は、古びたベンチに並んで腰を下ろした。――数十センチの距離。

大きな木の下に置かれた、手作り感満載の木製ベンチ。それは決して座り心地が良い物とは言えなかったけど、どこか温かい。


「ビックリしたやろ?」
「……え?」

いきなり確信部分を問われ、一瞬言葉を失いそうになった。けれど、せっかく話をしてくれようとしている椎名君。

それにちゃんと答えなければと思った。

「うん、…ビックリした」
「やろーな。正直、俺も母さんも静樹も、まだ慣れてないんや」

椎名君は、ポツリポツリと語りだす。お父さんの事、お兄さんの事、自分の事を。









椎名君のお父さんは、

お兄さんの事件があってから“心”が壊れてしまったらしい。当時は仕事にも行けず、病院にもかかっていたのだと教えてくれた。

そして、そんなお父さんの様子を見に病院に行った時。お父さんから出た一言が、椎名君達の生活を変えてしまったんだと。

『…ユ、ズ……キ』

元々、容姿の似ていた兄弟。現実逃避をした父親。それに合わせるようにと固く約束した家族。

その日から、椎名君は

一人二役をする事になったそうだ。

二人を見分けさせる為に、苦肉の策で赤いカラーコンタクトを入れるようになったのだと話す椎名君の瞳は、悲しい色だった。