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――翌日

僕は黒く戻った髪の毛を弄りながら、通学路の途中で項垂れていた。

桜の花は見事に散り、綺麗な緑色の葉が囁く桜並木道。行き交う人の視線は痛くはない。痛いのは、見えない別のところ。


「ホンマに、サボリ癖がついてしもとるな」

頭上から降ってくる声に、身体全体が揺れた。魂ごと、全部。揺らされた。

「…椎名君だって、サボる気満々じゃない?」
「うっさいわ」
「ええ~?」
「お前、ええ齢の男がかわいこブリッこしてもキショいだけやぞ」

悪態を吐かれても、ちっとも嫌じゃない。それどころか嬉しかった。だって、いつもの椎名君だったから。もう、無理だと思っていたのに。君って人は、






「……これから、話できるか?」

椎名君の言葉に、僕は静かに頷く。

無理矢理聞くつもりは無かった。けれど、もし話してくれるのなら、聞こうと思っていた。

「公園にでも行く?」
「そーやな」

サボリ、決定だね。先に歩いて行く椎名君の一歩後ろを着いて行く。昨日と同じように。


ただ、歩いて行く

何を喋るでもなく、

ただただ、歩いて行く