「そんなに怖がらないでよ。俺、普通にこの学校の生徒だし。」
「・・・・・・」
何も答えないあたしにその男は続ける。
「今日さ、新入生歓迎会ってことで、夜桜飲み会するんだけど、よかったら来ない?」
「やっぱり、ナンパに聞こえるんすけど・・・」
愛美は少し興味がありそうな表情をしながら、冗談っぽくそう言った。
「あー。違う違う。俺らのサークル、最低週1でサークル飲み会してるんだ。飲みサークルってやつ?んで、今夜は、こんなに桜が綺麗だから散らないうちに夜桜見物しようと思ってさ。」
そう言われ、桜の木を見上げた。
空の色が見えないまでに敷き詰められた薄ピンクの桜。
確かに今日を逃したら、今年はこれ以上綺麗な桜の下でお花見をすることは出来ないかもしれないと思った。
「もちろん、今日来たからって強制的にサークル入れって訳じゃないし。楽しければ入ってもらっていいし。・・・それから、今日は新入生は会費タダだから。」
「行きます!」
タダという言葉が聞こえたと同時に愛美が返事した。
「私たちも、この後何しようかなって考えたところだったんすよね。」