「お前、好きな人いるのかぁ〜?」


茶化しながら聞いてくる。


ドキンっと一度心臓が跳びはねたものの、


「いないですよぉ〜。こうやって、ワイワイ飲むほうが今は楽しいですから〜」


笑いながら返事する。


「今日のメンツは綾乃に気に入ってもらえなかったかぁ〜」


と冗談まじりに話す大輔さん。



どこにでもありそうな先輩、後輩の会話。

七分丈では少し肌寒いと感じるが、どこか心地のよい春の風。


そんな楽しい雰囲気のまま家に着くことができたならどんなによかったことか。




「あっ。よぅ」



同じ声のトーンのまま、大輔さんは視線の先を向いて声を発した。