初夏すら感じられる葉桜。
あっという間に散ってしまった桜が名残惜しく思えた。
満開の桜の下、咲夜さんと出会えたことが夢だったかのように思えてしまう季節の移り変わりの早さ。
一方、私の心は咲夜さんのキスされたときから時間が止まったまま。
そんな時の流れに取り残されたどこにも向けられない気持ちが、かすかに残る桜の香りのごとく渦巻いていた。
「愛美、ほんとにイケメン揃いなんでしょうねぇ?期待しちゃうよ?」
少し先を歩く愛美に小走りで追いついた。
「任せといてよ。がっかりさせないからさ」
その渦を断ち切ろうと、そう答えた愛美に万遍の笑みを浮かべた。