そんな中……
「あっ。あいつ、やっと来た~。」
人影がだんだんとこちらに近づいてくるのがわかるが、顔まではよく見えない。
その人影にレミさんは手を振る。
「あの人、すんごいイケメンだから。綾乃ちゃん、驚かないでね。」
イケメンだと言われると、ハードルが上がってしまうこともあり、実際に顔を見るとそうでもないと思ってしまうことが多い。
レミさんの言葉には、あまり期待しないでおこう。
そう思って、残りのお酒を一飲みした。
「おっ。やっと来たな。王子様。」
大輔さんから王子様と呼ばれるその人。
夜風が緩やかに桜の木を揺らす。
「今年もやってるなぁ。」
舞い散る花びらとともに、その人はやってきた。