泣きそうになるのを堪えて、先生の隣に立った。
フェンスにつかまって、先生の好きな空を見る。
「先生はなんでいつも寂しそうにしてるの?」
「そんな風に見える?」
頷く私に先生は微笑んだ。
「いつか言ったことがあるだろ?紫の空が好きだって。この空を見てると思い出すんだ。大切な存在が突然いなくなったことを」
「大切な人…?」
「じいちゃん。俺にとって両親よりも大事だったんだよ。そんなじいちゃんが亡くなったとき、病室から見えたのが紫の空だった。じいちゃんの好きだった空」
先生はタバコの火を消しながら、大きく息を吐いた。
「もう何年も前のことなのにな」
また私を見て笑う先生。
私はまだ大切な人がいなくなる悲しみを知らない。
でもきっと辛いんだ。
なのに先生は笑うの。
そんな風に笑わないで。