「…太郎くん」


太郎の心臓がドキッと弾んだ。

姿を現したのは、ついさっき次郎に太郎のことを質問した女の子だ。

申し訳なさそうな瞳。

太郎は覚悟した。


「…ごめんなさい。
この間の告白のことなんだけど、私、やっぱり太郎くんとはお付き合い出来ません」


女の子の一言に、太郎は頭を砕かれたような衝撃を受けた。

数日前のことだ。

太郎は、中学に入ってすぐに好きになった女の子に『好き』だということを伝えた。

一瞬、驚いた表情を浮かべた彼女だったが、すぐに『ありがとう』と笑顔を返してくれた。

その時はじめて、太郎は

“生まれてはじめて5になれるかもしれない”

と大きな期待を抱いた。


『家に帰って、ちゃんと考えた上で返事したいから、少し待ってて』