昼休み直前の授業、ロングホームルームで配られたのは、中学最後の成績表だ。
卒業を明日に控え、ルンルンランランな気分だったのにも関わらず、
現実はぐっさりと太郎の胸に突き刺さり、そう簡単に抜けてはくれなかった。
1や2ばかりをとる次郎に対し、常に4をキープする太郎のことを、2人の母親は誉めまくる。
『自慢の息子だわ~』
それが母親の口癖だ。
しかし、いつまで経っても5をとれずにいる自分自身を好きになることなど出来ない太郎。
いつか、自分が4.9999999以上になれる日はくるのだろうか…。
そんなことを考えていると、太郎以外誰もいないはずの屋上に、ギイィと重苦しい音が響いた。
驚いた太郎が振り向くと、扉の奥には1人の女の子が、じいっと太郎を見つめている。