生まれた時からそうだった。

惜しい、惜しいと言われ続けた15年間。

太郎が生まれたのは12月31日の23時59分。

兄である次郎は31日の昼間に生まれたのにも関わらず、

生まれる前からひねくれていたのか、太郎はしばらく母親のお腹から出てこなかった。

急遽、帝王切開で23時59分に生まれた赤ちゃん。

それが太郎だ。

最初、親戚中が“惜しい惜しい”と面白がっていたが、

幼稚園に入学する頃になるとみんなそんなことを忘れていた。

中には1月1日だと勘違いし、“明けまして誕生日おめでとう”と言ってくるオジサンもいた。

惜しい人生など嫌だと嘆く本人などお構いなしに、世界は太郎に“惜しい”を用意することを忘れない。