そんな彼女の言葉も、一度有頂天になった太郎の耳に残るわけがなく、

浮かれるところまで浮かれきったために、さらなるショックが襲いかかる。

この世のおわりだ。

太郎はそう思った。


「太郎くん、ごめんね。
太郎くんはとても良い人だと思うよ。
優しいし、気さくで話しやすいし、頭も良くて……」


この世に生を受けてから、15年。

中学卒業を控えたこんな日にまで、太郎は“5になれない”人生を送るのか。


「さっきの成績表じゃないけど、私にとって太郎くんっていう存在はどうしても4以上にはなれなくて、4.9999999…の惜しいところをさまよってるっていうか…」


ゴーン。

大きなタライが、太郎の頭をめがけて空高い場所から落ちてくる。