どうぞ、と神崎先輩の口元付近まで持ってきたそれをじっと見つめていた神崎先輩は、がしっと私の手を包む様に掴んでから、かぷっと上手にイチゴだけ食べる。

「……あまい」

 口に入れた途端そう呟いた神崎先輩があまりにもおかしくて、つい笑ってしまった。

「イチゴが甘くなかったら嫌ですよっ」

「そうだけどさ」

「あははっ!」

 神崎先輩にクレープを預け、お腹を抱えて笑う私を見てむっとする神崎先輩は、甘いものが嫌いなのにがぶっとクレープに噛み付いた。

「うえぇっ」

 直後、罰ゲームを食らった様な顔になったのは言うまでもないんだけど、ものすごい顔だったの。

 ようやく私の笑いと神崎先輩のものすごい顔が直ってきたところで隣から「良かった」と聞こえた。

「何が良かったんですか?」

 何も考えず率直に聞き返せば、

「優衣ちゃん、ちょっとは元気になったみたいだしね?」

 さらりとした笑顔に乗せて、思いがけないことを仰る神崎先輩。

「私、元気ですけど……?」

 クレープを口に運びながら頭を傾げる私に神崎先輩は、ふっと一瞬だけ不安そうな表情を見せる。

 直後、ふわっと私を抱き寄せた。