カランカランと鳴る下駄に気付いたのか神崎先輩が振り返ったのとほぼ同時に私は神崎先輩に抱きついてしまった。

 別に抱きつこうとしていたわけじゃないんだけど、脚がうまく止まらなくて抱き留められた、の方が正しい。

「優衣ちゃん? どうしたの?そんなに焦って。 クレープ待てなかったの?」

 ちょこちょこ動いて神崎先輩の背後に回り、さっきまで座っていた場所を隠れ見る。

 けれど、私に話し掛けてきた不信者(絶対信じられないでしょ?)はすでにいなかった。

「……ちょっと知らない人に話し掛けられて。怖くなって、つい……」

 すみません、と謝る私の頭を優しく撫でた後、神崎先輩は「足は?平気?」と心配そうな表情を浮かべる。

「とりあえず場所変えよっか、ね?」

 すっと自然と私の腰に手を回した神崎先輩に連れられて、少し離れた小さな公園にやってきた。

 公園には兵児帯(へこおび)を着けた浴衣の可愛らしい女の子が甚平を来たその子よりも少し大きい男の子と遊んでいる。

 そんな可愛らしい兄妹の反対側には20代のカップル。

 「はいどうぞ」と渡されたクレープはイチゴがたくさん入っていて、美味しそう。

「神崎先輩。イチゴなら食べられます?」

「え? まあ、食べられるけど?」

 不思議そうに私を見る神崎先輩に私は、生クリームのついていないイチゴの部分を指差した。