「映画………」

「えっ?」


「この前受けた映画の主役に選ばれた」

この前って言うのは
初デ-トの約束の日。
きっとあたしと翔平の
距離が離れていった
あの日の事だろう。


「よかったじゃん!憧れの監督の映画なんでしょ?おめでと」

「サンキュ-……」

ホントはね
ハグなんかして
『イェ-イ』って
一緒に喜びたい。

でもそれは許されない。

だってあたし達はもう
仲のいい幼なじみにさえ戻れない。


あたし達の肩書き。

“元カレ”“元カノ”


だからもう
幼なじみって言う
関係には戻れない。

「俺、高校中退する事になったから」

「えっ、何で?」

「まぁ、結構知名度とかも出てきたし、パニックを起こしたらいけないから芸能科のある学校に編入する事になって、……ほれ、退学届け」

ピランと薄い
紙っきれをあたしに
見せる。


「そっか、芸能人も大変だね」

ははっと
小さく笑って
ゆっくり歩き出した。


「あの日っ!!若橋に何か言われたんだろ!!!?」

ビクンと肩が
強張った。

「な、何も……言われてないよ!!じゃあね!」

逃げるように
学校を飛び出した。


「美優ちゃん……?」

そっと顔を上げると
視線の先には和也がいた