案の定
コミコミの店内に
嫌気がさす。


「なぁ…」

「何?」


「この距離は一体……」

通路の端と端を歩く
あたしと翔平。


「だって特大マスク男が彼氏だなんて知り合いに見られたらぁぁ~」


「み-ちゃん♪」


……この声は!!!


「楓ちゃん……」


今この状況で
逢いたくない人No.1。


「この人がみ-ちゃんの彼氏さんなの?」

「ち、違うって!」


「嘘だぁ、さっき話してたじゃん」


この地獄耳女。


「ねっ、そのマスクってギャグ?超ウケる-」


「ちょっとガゼで……」

何、そのわざとらしい
鼻声は。


それでもお前は俳優か!!

「マスク取ってよ~♪」

あたしは楓ちゃんの横で
必死に首を振る。



「い″やあの~ちょっど~」


「えぇい♪」


オ-マイガ-!!


「「あっ」」

珍しくあたしと翔平が
ハモった。


「高橋翔平ぇぇ~!!!」


………終わった…
あたしの努力は水の泡だ

「ぢがうよ!ぞっぐりざんだよ!」


ぞっぐりざんって……



「そぉなんだぁ♪」


あ、
信じちゃうんだ……