「うふふ。まぁ上がってちょうだい。
荷物は部屋に運んどいたわ。
あ、そろそろ駿一も帰ってくると思うわよ。」

「‥駿一君、僕の事覚えてましたか?」

何気なく聞いてみた。
普通に話しかけて、「誰?」みたいな反応されると気まずいし。

でも、僕がそう言った事でおばさんの動きが止まった。


「おばさん?」

「あぁ、ごめんなさい。実はね、駿一‥記憶喪失なの‥。
一月の終りに学校で倒れて‥それっきり。
何も思い出してなくて。
でも元気だから大丈夫よ。
‥それでね、お願いがあるんだけど‥。
初めて合った様に接してくれないかしら‥。」

「‥‥‥はい。わかりました。」


‥信じられない。
記憶喪失?
そんなの、テレビドラマだけの話だと思ってた。

「こんなお願いするなんて‥ほんとにごめんなさいね。」

「大丈夫ですよ。ちょっとびっくりしたけど、駿一君のためにも、その方がいいだろうし。」

「うふふ。ありがと。じゃあ、部屋は二階の奥だからね。荷物置いて来なさい。
入学式、疲れたでしょ?
んもぅ、朝一番で来てくれたら良かったのに~。」

そう言って頬を膨らませる可奈子おばさん。

いったい何年代のアイドルなのか‥。