「そんなのは関係ないよ。みんなは関係ない。」

僕は彼女の質問になるべくゆっくりはっきり答えた。

「じゃあ、どうして?」

一呼吸置いて、またゆっくり答える。

「僕が嫌いだからだよ。みんなを。学校を。世界を。」

「どうして?」

また彼女は寂しそうに聞いてくる。

「じゃあ、黛(まゆずみ)さんは、みんなのこと、どう思う?」

僕の質問に彼女も答える。
「そりゃ、好きな人も嫌いな人も、なんとも思わない人もいるよ。」

「好きな人とは、やっぱり一緒にいたい?」

そりゃそうでしょ、と彼女が返すと、すかさず僕はこう聞く。

「じゃあ、嫌いな人とは?」

彼女は黙り込んで、うつむいてしまった。

「・・・ね?そういうこと。誰だってそうだと思うよ。嫌いな人と一緒にいて、楽しいなんて思わないでしょ。だから僕はいかないんだ。」


「でも、じゃあ優君は誰かを好きになったりはしないの?」

だんだん彼女は必死になってきた。
そりゃそうか。今僕は、彼女すら否定してるんだから。

「無いよ。一生。」

彼女はもう何も言わなかった。

そして、さよならもいわずに帰っていった。