「詩音、どうした?」
不意に晴樹君が名を呼ぶ。考えすぎてたようだ。知らぬ間に長い時間が過ぎてる。
「大丈夫。少し考えてただけ。」
「そうならいいが・・・・。人、いないな。」
小一時間私達は動き回っているが人間は愚か生きているものに出会っていない。
この世界は私達以外停止してる。いや、死んでる。
車も民家もある。入れば生活観がある器物はあるけれど肝心のそれを使う人がいない。食べ物も有る。冷蔵庫も稼動してた。
暫くすると駅に着いた。時計は動いているし改札口も券売機も稼動してる。ただ、時刻表には時間が表示されていない。
「なにこれ・・・きもちわるい・・・。」
時刻表を見た美穂は言う。時刻表であるはずなのに、時刻表として機能していない。時刻が表示されていないから。
理由は簡単だ。利用する者も、提供する者も、この世界には存在しないんだ。
ただ、この世界にはモノが存在してるだけなんだ。

ひどい孤独感。空虚感。